英国シティズンシップ教育(3)ーcontroversial issues(論争的な問題)

英国シティズンシップ教育(3)ーcontroversial issues(論争的な問題)

今回の記事では、英国シティズンシップ教育の重要な要素の一つであるcontroversial issues (論争的な問題) への向き合い方を紹介したいと思います。

英国シティズンシップ教育の勉強をしようとすると必ず出てくるこちらの報告書があり、今回はこれをベースに紹介していきます。
Education for citizenship and the teaching of democracy in schools
これは、シティズンシップ教育の導入・実践開始のために作成された報告書で、当時の委員会のトップだったバーナード・クリック氏の名前を取って、通称「クリック・レポート」と呼ばれているものです。

このクリック・レポートの中の、シティズンシップ教育の導入における懸念点・注意点の文脈の中で、controversial issuesの扱いについて書かれています。

報告書では、

シティズンシップ教育が思想の吹き込みになるという不安を持つ人もいるだろう

と懸念点について指摘する一方で、

シティズンシップ教育の中では必ず意見の分かれる(論争的な)問題を取り扱う必要がある

としています。

イギリスの教育法(The Education Act:1996)では、政治的問題や論争的な問題を扱う際には一面的な意見のみを提示してはいけないと定めています。それに言及しながら、クリックレポートでは

教育の場面では…大人たちの議論から我が国の子どもたちをかばおうとするのではなく、そのような議論に知的、良識的、寛大かつ道徳的に対応するための準備を行わなければなりません(長沼・大久保,2012,p.199)

と促しているのです。

もちろん、教育者による思想の吹き込みは行ってはならないこととされ、意見の分かれる問題を扱う場合には、

教員は児童・生徒に、偏見や先入観を見分けたり、目前に提示された証拠を評価したり、別の解釈・視点・証拠使用を探ったりする方法を教えるといったやり方を用いるべきです。中でも、児童・生徒のあらゆる発言や行動に正当な理由づけをしたり、他者からの正当な理由づけを予測したりする作業は重要です(長沼・大久保,2012,p.199)

としています。

クリック・レポートでは、教育の現場で意見の分かれる問題を扱わないことは、むしろ将来そのような問題に出会った時にどのように対処したら良いか学ぶ機会を損なってしまうことであり、重大な機会損失であると考えられています。

意見が分かれる論争的な問題は、そういう問題だからこそ教育現場で積極的に扱うべきだ、という論調はとても面白いと思いました。そして私もこの考えには賛成です。

では、論争的な問題を取り扱っていく上で実際に重要なことは何なのでしょうか。次回はそれについて書こうと思います。

出典:
Final report of the Advisory Group on Citizenship(1998)
Education for citizenship and the teaching of democracy in schools
http://dera.ioe.ac.uk/4385/1/crickreport1998.pdf

長沼豊・大久保正弘 編著 (2012)
社会を変える教育 Citizenship Education
第3編に上記クリックレポートの全訳が掲載されています
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