[movie] School of Babel

[movie] School of Babel

BrixtonのRitzy Cinemaという映画館に、「バベルの学校」を観に行きました。
2015年3月に日本で公開されると聞いていて、羨ましいなと思ってたのですが(こちらでは2014年にほぼ上映が終わってます)たまたま1日だけ上映されたのです!

まずはBrixton周辺を散歩。
実はテムズ川以南に来たの初めて…!街の雰囲気やマーケットの雰囲気も少し違います。
やっぱり南と東のエリアは似た雰囲気を感じます。この辺りは社会的・経済的にも厳しい暮らしをしている人の割合が高いので、並ぶお店やマーケットの雰囲気などが違うのです。

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映画館は駅のそばにあります。ギリギリに着いたけど、前の上映の遅れにより待たされること15分くらい。
映画の開始時間が遅れるとか初体験…(笑)

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そんなこんなでしたが、上映の前に、まさかの事前レクチャーがありました!知らなかったのでびっくり。
Roehampton大学で映画・TV研究をされている先生から、この映画の背景にあるフランスの状況や、
映画で描かれているポイントについてお話がありました。
10分くらい話があり、大学の授業みたいな気分になり思わずメモを取ってしまいました(笑)
社会背景としてはこんな話などがありました。

・フランスでは70%以上の人が「この国には移民が多すぎる、そしてそれが就業率の低さの一因となっている」と思っている
・フランスに移住してきた人たちの72%がここを自分のhomeだとは思えない状況にある

移民の受け入れについては、日本でもたびたび話題になったりしますが、どうしてもついて回るのが治安に並んで雇用の問題。
日本のこれからのことを考える上でも、こういう話はやはりきちんと聞いて、考えないといけないことがたくさんありますね…。

そんなこんなの嬉しいサプライズがありつつ上映開始。
90分があっという間で、でもその中でいろいろなことが起こって、本当に感じるところがたくさんの映画でした。
以下、内容を取り上げながらの感想です。

▼reception classへの差別について

和訳ではどうなってたのか気になりますが、クラスの生徒が
「みんながreception classの人のことをmosquito(蚊!)みたいに扱う」と言ってたのが衝撃でした。
それってどういうこと…!!
最後のポイントでも書きましたが、彼らにとって学校は(そして恐らく学校外でも)、
自分を一人の人として認めてもらうことが難しい場なんだろうなと思います。
それでも「蚊みたいに扱われる」という発言が出てくることに少なからずショックを受けてしまいました。
フランス語ではどんな言葉を使ってたのでしょうか。。

▼移民としての自分のバックグラウンドを語る授業

「フランスに来る前日、どんな気持ちだった?」
こんな内容を扱う授業、教師側の力量が本当に試されると思います。

・とにかく怒ってた(友達になにも言えずに来た、というエピソードも…)
・嬉しい気持ちと寂しい気持ちが混ざってた
・嬉しかった。自分の国は危険すぎて、外も満足に歩けなかったから

それぞれの思いは様々。
たとえ嬉しいと思って来た人でも、その後は嬉しい気持ちがなくなってしまったと言ってた人がほとんどでした。

私などは全然状況は違うけど、外国に住んでいると本当に疲れることが沢山あります。
言葉も大変だし、環境や文化も違うし、自分の知らない慣習もあるし、どこか緊張は途切れないし。
望んで来た身のくせに、たまに辛くなったり、なんでここまでしてるんだっけ…なんて思ったり。

ましてや親の事情で、迫害を受けそうになってなど、自分ではどうしようもない理由で、
ある日突然、友達にさよならも言えずに知らない土地に来て、言葉もわからなくて、差別されて…なんて生活、
本当に辛いと思います。

先生の質問にしっかりと自分のストーリーを話している姿は本当にすごいと思いましたし、
同時にこちらが勝手に「かわいそう」などと同情するのは失礼だと感じました。
子どもは大人が思っている以上にしっかりしてるし、強い面もある。
事実をありのままに受け止めていく強さが、彼らがこれから生きて行く上で必要だとも思います。
このテーマに正面から向き合って、その作業をしっかり支えるのが教師の役割なのかなと思いました。

▼親御さんとの関わりについて

三者面談のシーンも何度かあって、ここでも思うことがいろいろとありました。

<中国から来た女の子>
「writingはよくできるけど、speakingではちょっとシャイ過ぎる」という先生のフィードバックに、お母さんが
「中国人の女の子はそういうものなのです(それでいいのです)」みたいに返してるのが気になりました。
・彼女はこれからフランスで暮らしていこうとしている。その状況でもそれでいいのか
・そもそも中国に住んでいたとしても、「中国人の女の子らしいこと」はそれが良いことなのか

女の子だから、とかそういうことじゃなくて、ひとりの人として彼女のことを考えることが
大事なんじゃないのかと感じてしまい…。
このような価値観や、社会から期待される行動の仕方はどのコミュニティにもあると思うのですが、
それを身につけることも「常識」だとは思う一方で、
本当にそれでいいのか常に考える必要もあるのではないかと思います。

<アイルランドから来た男の子>
数学に課題があるというフィードバックを受けて、お母さんが
「軽度のアスペルガー症候群と診断されたことがある」という話をします。
「それを理由に他の子と異なった扱いを受けるべきではないと考えている。
彼の診断は知りつつも、兄弟と同じことをさせていた。それが彼にとってもチャレンジになって良い」
というようなことをお母さんは言っていました。

これについても、いろいろ思うことはあり…
・特別ニーズがある場合は、早い段階で適切な方法でサポートした方が、
将来的にその特性を乗り越えたり、自分のものにするために良い場合がある。
「普通クラスにいるべき(特別扱いしない方がチャレンジングで本人のためだ)」という考え方が、
必ずしも良いとは限らない

話は少しずれますが、春学期に受けた「Rights and Education(権利と教育)」の授業で散々悩んだポイントですが、
誰が教育に関する権利を持っているのか、という点も悩ましいものがあります。
「自分がどんな教育を受けるか」については、本人はもちろん、親にも決定権があると
人権宣言にも明確に書かれています。(*1)

子どもがどんな教育を受けるのかについて、特に子どもが幼いことは親が決定する権利を持っているのです。
でもそれはいつまで?本当に親が決めていいの?
そもそも一人の人の権利について決定権を持つ人が2人いる状況ってどうなの…?
親に決定権がある理由のひとつは、まだ年齢の低い子どもは自分で適切な判断ができないからです。
でも、親が決定をする際に、十分なサポートや情報提供はあるのでしょうか?
親だからって何でもかんでも知っているわけではないはずです。
「教育の権利」ひとつ取っても悩ましい論点は沢山あります。

▼宗教について

こちらに来て本当に思いますが、宗教の問題は本当に重要なissueです。
正直、たとえば進化論を教えることやホモセクシュアリティなどについて扱う場合に宗教的な背景を考慮する必要があるなんて、
全く考えたことがなかったです…。
映画の中でも宗教について授業で扱われていて、生徒のみんなのリアルな会話が展開されていました。

・父親と母親の信仰が異なり、離婚によって2つの宗教を同時に教えられていた生徒
これってかなり大変なことなのではないかと思いました…。
彼女は「もうなにがなんだかこんがらかっちゃって」と明るく言ってましたが、
おそらくどちらの宗教行為に参加しているときも他方への後ろめたさはあっただろうし、
親御さんの離婚の話もあいまって、大変な思いをしてきたと思います。
ましてや宗教が大きな重要性を持つコミュニティに所属していたらなおさら。
親御さんには親御さんの事情があったとは思いますが、こういうときに子どもがどういう影響を受けるのかを考えることは本当に重要だと思います。

・スカーフについて
フランスでは校内でスカーフの着用を禁止しているようですが、この映画の中でも、生徒の一人が
「私はママにスカーフをしたいと言ったの」と発言しています。
その理由は、「自分が大人の女性になったという気持ちを持てるから」。

スカーフをする理由=イスラム教を信仰しているから、と勝手に理解していたけど、
彼女にとってスカーフをすることは自分に自信を持たせることだったり、
大人の女性なんだと感じられる喜びだったり、そんな意味もあるのかと知って驚きました。
一つひとつの行動について、その人の意味や目的があって、それを知ろうとすることは大事だなと改めて実感。

▼お別れのとき

一年を通していろんな生徒の話が出てきて、特にクラスに馴染めず何度か取り上げられてた子もいたけど、
私にとって印象的だったのは、中国から来た女の子の最後の手紙でした。
「先生はまるでお母さんみたいだった。
みんなが私のフランス語を笑う中、先生は私のフランス語は上手だと言ってくれた。
それがすごく嬉しかった」

彼女は10年間、母親と離れて祖母と暮らしていて、10年ぶりに母親のいるフランスに来て親子で生活するようになった子です。
話中に出てくる、生徒それぞれへのインタビュームービーの撮影シーンで、
「おばあさんに会えなくなったことは寂しくない。お母さんと一緒に住むようになったけど今も幸せじゃない。」
と言っていて、これは聞いてて辛くなる話でした。

そんな彼女から「まるでお母さんみたい」って言われる先生ってどんなに素晴らしいんだろうと思います。
言葉が通じるって、単に伝達できる以上の意味があって、
彼らにとっては「自分をきちんと一人の人として認めてもらえるか」という真剣な意味合いも含んでいると思います。
うまく通じないと「はぁ?」って対応をされることもあるし、ましてや「蚊みたいに扱われてる」というような発言が出てくる彼らは、
本当に悔しい思いを沢山しているだろうと思います。
そんな中で「あなたのフランス語は上手だね」と言われたら、本当に嬉しいだろうし、安心すると思う。
彼女にとって本当に重要で、大きな意味を持った先生の言葉だったんだと思います。

本当に思うところや考えるところが沢山の、素敵な映画でした。観れて本当に良かった。


*1
Universal Declaration of Human Rights. United Nations
Article 26 (3)
http://www.un.org/en/documents/udhr/index.shtml#atop

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